近年、救急救命士が大学院に進学するケースが増えています。志望動機は様々で、「救急の知識を増やしたい」「救急の研究をしてみたい」「学会発表してみたい」「論文書いてみたい」「指導救命士として後輩育成に役立てたい」「大学の教員になりたい」など多岐に渡ります。しかし、進学には様々な不安がつきもので、「周りに大学院に進学した救命士がいない」「相談できる人がいない」のが現状です。
今回の記事では、入学前に準備すべき4つのこと柄を修士課程に進学予定の救急救命士に向けにご紹介いたします。大学院博士課程を修了した救急救命士の実体験をもとに、準備のポイントをご紹介します。

【大学院】救急救命士が大学院入学前に準備すること4選
入学前に準備することは
研究計画書(研究テーマと研究室訪問)
重要度: ★★★★★

研究計画書は大学院での研究の基礎となる計画を指します。しかし、研究計画書と言えどその幅は広く、研究テーマを何にしようか考えているレベルやすぐに研究を始められる詳細まで練られた計画書など計画の内容は様々です。大学院入学前に準備する研究計画書として必要な項目は、①研究テーマ(分野)が決まっていること②その分野では「何が分かっていて」「何が明らかにされていないか」を知っていること③データが取れる施設の目星がついていることの3点が明確になっていれば修士課程の研究もスムーズに進むと思います。
①の研究テーマですが、興味のある分野や、普段の臨床経験で感じた疑問点を選定するとよいでしょう。入学後に指導教授から与えてもらうケースや研究室で取り扱っている研究テーマを引き継ぐケースも多くあります。(筆者は指導教授からテーマを与えてもらい博士課程修了まで研究しました。)研究テーマの方向性が決まると、先行文献を調べるためには研究する分野の関連論文を読む必要があります。論文を読んで「何が分かっていて」「何が明らかにされていないか」を知ることは研究テーマをブラッシュアップするのに重要な過程になります。③については自身が所属する所属長とのすり合わせが必要になりますので、事前相談しておくのがよいでしょう。
論文の検索エンジンについてはこちらの記事をご覧ください。
①~③がまとまったら、希望する大学院の研究室の訪問になります。進学したい大学院の指導教授に連絡(メール)をして、自分の研究テーマと教授の指導内容が合致しているか?研究室の雰囲気は?働きながらの学生生活は大丈夫か?など細かい相談をするとよいでしょう。個別で連絡を取るのが難しい場合は事前に大学の入試課に連絡をしたうえで、オープンキャンパスに参加するのも一つです。指導する教授にも専門分野がありますので自分がやりたい研究を指導してもらえるかを主眼として、各大学のHPに掲載されている内容を参考に研究室訪問をしてください。
専門知識と英語力
重要度: ★★★

救急の大学院に進学予定であれば、専門的な知識は必須になります。どのくらいの専門知識が必要なのでしょうか?答えは国家試験合格レベルの知識があればなんとかなります。もちろんたくさんの救急現場を経験していることは強みになります。なかには大学卒業後に、ストレートで進学する学生もいますので専門知識の最小限値で修了できることは証明されています。実際、大学院修士課程では専門的知識を深めるための講義が用意されているのでそこで勉強すれば問題ないです。しかし、大変なのが英語力です。先ほどの研究計画書で紹介した②の先行論文の調査では、日本語のみで検索したかもしれませんが、英語の論文のチェックも必須になります。
具体的にはどのレベルの英語力が必要なのか?筆者の経験では、英検2級(高校卒業レベル)以上の文法と単語に加えて専門分野(研究テーマ)に関連する医学用語、そして統計学の用語です。最低限これらの知識がないと英語論文を読むのは難しいでしょう。最近では、Google翻訳等を利用して論文を読む方法もありますが、大学院に学びに来ているので最低限の英語論文を読破するだけの力は勉強した方がよいでしょう。筆者の大学院修士課程時代では、分からない単語を一つ一つ訳しながら論文を読んでいました。最初は1本の論文を理解するまでに1週間から2週間を要していたものが博士課程に進学する頃には、日本語と同じスピードで読むレベルになっていました。(いまだに初めて会う単語が出てきますのでその都度調べています。)
学費(学ぶための費用)
重要度: ★★★★

大学院で学ぶ以上、お金がかかります。大学に収める学費以外にも学会への参加費や図書購入費、PCなどの通信費、通学に必要な交通費等様々な出費がかさみます。大学院によっては、少額ながら研究費がつくところもありますので、一定金額までは費用負担がないところもあります。
救急救命士の大学院は私立が多く、2年間で200万円~300万円の学費がかかります。国立に進学した場合でも100円前後の学費がかかるでしょう。
いくつかの救急の専攻のある大学院の学費が記載されているリンクを用意しましたのでそちらもご覧ください。
帝京平成大学大学院健康科学研究科
国士館大学大学院救急システム研究科
日本体育大学大学院保健医療学研究科
杏林大学大学院保健学研究科
所属の許可
重要度: ★★★★★★★★★★

重要度の★が10個になりました。公務員の救命士の方は大変重要な要素です。多くの院生が消防で働く救命士です。そのため自分が所属する直属の上司の許可が必須になるのです。(職場だけではなく、家族の了承を必要な方も)所属の許可があるメリットとしてデータ収集に協力してもらえたり、日常の授業やゼミ、学会への参加への業務調整をしてもらえることで、大学院生活がより充実するでしょう。
実際に所属からの推薦があり大学院に通われた方は、修士課程修了後、所属の後輩を入学をおすすめして、毎年その消防本部から入学できる教育システムを取っているようでした。そのため署内での情報共有がスムーズに行われ、大学院に進学したと思う救命士も多くいるとのことでした。
まとめ
以上4つを紹介しました。救急救命士が大学院に進学したケースは聞くけれども実際に自分が入学できるか不安だと思う方もいると思いますので今回の記事を参考にしていただければ幸いです。その他に準備すべきことがありましたらコメントにどうぞ。
素敵な大学院生活をお楽しみください。
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